ホテル業の再構築を目指す。ソーシャルホテル”HOTEL SHE,”の挑戦。

REPORT

9月1日、大阪・弁天町に「ホテルシー大阪(HOTEL SHE, OSAKA)」がオープン。同ホテルでは、ゲストとホスト、ゲスト同士のコミュニケーションを重要視する“ソーシャルホテル”という新たなコンセプトを掲げる。
GLAMP編集部では、龍崎翔子チーフ・クリエイティブ・オフィサー(CCO)にHOTEL SHE,が考える新しいホテルの形について話を聞いた。

ソーシャルホテルとは何か?

hotelshe大阪

HOTEL SHEでは”ソーシャルホテル”という言葉を掲げられていますが、どのような思いが込められているのでしょうか?

ソーシャルホテルとは、「スタッフやゲスト同士のコミュニケーションが生まれホテル単体だけではなく地域やカルチャーと混ざり合う機能をもった」ホテルと定義しています。
ソーシャルホテルという言葉から「インスタ映え(*)するホテルですか?」と言われる事もありますが、ソーシャルは単にSNSを指すのではなく、人々が触れ合う場所と考えています。
今回の「ホテルシー大阪(HOTEL SHE, OSAKA)」が開業する弁天町は元々は大阪港の下町として栄えた港街で、商店街にはレトロなお店や銭湯、古い倉庫などが点在する独特のエリアです。そんな街の歴史を踏まえて、単なる宿泊する場所だけではない、ホテルを提案していきたいと思っています。
旅先で偶然知り合った人と話が盛り上がったり、オススメされたお店がとても美味しかったりと思いがけず得られた情報や体験って記憶に残りませんか?
旅の満足度は、宿泊という機能以外の部分にこそあるのではないかと思っており、満足度をあげるホテルを試行錯誤しています。

そのような考えはどんな体験から生まれたのですか?

小さい頃に家族でアメリカ横断旅行をした体験が原点かもしれません。様々な街を巡り色々な場所や景色をみたのですが、泊まるのはどこも同じようなホテル(モーテル)でした。
その中で、唯一ラスベガスだけは街の雰囲気らしいテーマパーク型のホテル(サーカスサーカス等)で輝いていました、やっとこんな素敵な所に泊まれると、とてもテンションが上がったことを覚えています。結局、また同じようなモーテルに泊まったんですが…
そうした体験からホテルには、もっと場所ならではのエンターテイメント性があってもいいなと思い、自分だったらもっと面白いホテル作れるなと子供ながらに思ったことが原体験ですね。

惚れるホテルを模索

SHE_ryuzaki

ホテルにおけるエンターテイメント性とはどういう意味ですか?

誤解を恐れずにいうと、シティホテルやビジネスホテルは宿泊者を楽しませたり喜ばせることを目的としてないと思っています。やはり基本となるのは、安心安全に泊まれるという事。その為、何かサービスに落ち度があり不満に思うことはあっても、楽しかったといった感情が高まるシーンは少ないのではないでしょうか。
HOTEL SHE,では、感情を高める仕掛けを構築し、それをエンターテイメント性につなげていきたいと思っています。ホテルの基本は安心安全に泊まれるということですが、ブランドとして無形であるエンターテイメント性を組み込むことで、単純な立地や値段で比較されがちなホテルの軸から、選ばれる「惚れるホテル」にしていきます。

「惚れるホテル」を実現するためにこだわっている点はどこですか?

宿泊機能以外のコンテンツの充実。基本となるのはスタッフです。
ブランド名となっているSHEですが、「Satisfactory(心ゆく)」「Heartfelt(心暖まる)」「Emotional(心に残る)」の頭文字をとっており、サービスの基本精神としています。
例えば、かしこまりすぎずにゲストが気軽に話しかける距離感を意識しており、ゲストハウス的な気安さとホテルとしてのキッチリした機能を併せ持つことを目指しています。HOTEL SHE,では、オープンエリアでスタッフがパソコンを使用したりしますが、ホテルとしては珍しい行為かもしれません。
世界的にAirbnbなどの民泊が広がっていますが、民泊が伸びた背景には「コミュニケーション」「宿泊料金」に対する不満があり、結果として他人の家でのシェアリングに辿り着いたのではないかと考えております。そうした不満に対する解決は、民泊でなくても実現できますので、HOTEL SHE,ではコミュニケーションとリーズナブルな料金で惚れて貰いたいと思っています。
インバウンド需要も多いため語学堪能なスタッフ揃えており、言葉が伝わらないという旅先で最も多いストレスを排除しています。

ホテルシー大阪で特に意識したことはどういう点ですか?

出店する地域毎にコンテンツ設計を変えていますが、大阪では弁天町という街との親和性も考慮して、アナログカルチャーを打ち出し、Vinyl Cruiseさんと共同で、全室にレコードプレイヤーを設置しロビーから自由にレコードをレンタルできるようにしました。
iTunes等で次に聞く音楽まで決めてくれる時代だからこそ、スタッフのおすすめ、アナログ・レコードをジャケットで選ぶ、部屋でわざわざレコードを聞くというような行動をすることで、音楽を聴く価値を凝縮したいと思い設置しました。
レコードはもちろん購入可能で、気に入って買ってくださるお客様も多いです。
ソーシャルホテルを標榜していますが、コミュニケーションを強制しているわけではありません。ただ部屋に篭ってしまわれるとテレビを見る、インターネットをするというどこのホテルでもできてしまう体験になりがちです。そこレコードを通して、HOTEL SHE,との接点を作れる仕掛け作りにチャレンジしています。
また、ロビーには若手のバリスタが拘りのコーヒーをいれる「ワークベンチコーヒーロースターズ(Workbench coffee roasters)」2号店が出店しています。コーヒーだけでなくフードはピザをメインにしています。ピザって丸いからシェアできますし、ソーシャルホテルらしいかなと思っております。
レコードやコーヒーというコンテンツを揃えることで、スタッフやゲスト、ゲスト同士の会話が自然に生まれるように設計しています。

次は温泉旅館を再構築

ホテルシー層雲峡

今後の展開などで計画されていることはありますか?

北海道の層雲峡という土地で、80歳を超えるおばあさんが1人で運営してきた温泉旅館「ホテル雲井」を引き継いだ旅館をそのまま営業しているのですが、この冬にリノベーションし、「ホテルシー層雲峡」として生まれ変わらせます。層雲峡は、秘境のような場所なんですが、温泉旅館をソーシャルホテルとして再構築していきます。
追記:インタビュー後に、ホテル雲井がリニューアルオープンしました。
また、ホテル業だけでなく今まで見落とされていた、場所やサービスについても注目しており様々な構想があります。
今後も、多くの人が旅をして、出会い、楽しむという世界を広げて行きたいと思っています。

HOTEL SHE, OSAKA(ホテルシーオオサカ)
チェックイン / チェックアウト:15:00 / 10:00
*ワークベンチコーヒーロースターズ営業時間:7:30~23:30(L.O.22:00)
住所:大阪市港区市岡1-2-5
電話番号:066-577-5500(8月26日以前の問い合わせ先:075-634-8340)
アクセス:JR大阪環状線 / 大阪市営地下鉄中央線「弁天町駅」徒歩5分
公式サイト
予約サイト:[Yahoo!トラベル],[楽天トラベル],[るるぶトラベル],[じゃらん],[Expedia]

注釈
*インスタ映え:instagram等のSNSで投稿したくなるような写真がとれる場所や商品

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